今日の「詰将棋並べ」
勉強の準備は良いですか。
初めてのかたは まずは以下の過去記事で
学習の進め方をご確認下さい。
【ぴよ将棋さん】を使用した学習方法も
併せて ご参照ください。
ご自宅の盤駒で じっくりと
職場のご休憩時間なら
マグネット将棋盤などで
並べてくださると嬉しいです。
引き続いてコツコツと
江戸時代の作品から勉強していきます。
天野宗歩のお弟子さん「渡瀬荘次郎」
渡瀬荘次郎著 「待宵(まつよい)」から
「江戸慶応」の時代の詰将棋です。
今回は【待宵 第48番】です。
テーマ:
・余詰がある
・変同(変化同手数駒余り)
詰め手順を並べる前に
今回の48番には
作者の意図する詰め手順(=作意手順)
のほかに
*余詰 という
攻め方が手を変えても詰む手順があります。
さらにもう一つ
玉方が手を変えて逃げますが
作意手順と同手数で詰み かつ
駒が余る詰め手順もあります。
*変同 といいます。
つまり この作品には
3通りの詰め手順があります。
参考記事:待宵第6番 (余詰と変化の記述があります)
以下で その
3通りの詰め手順を書きますので
まずは順番に 全部の手順を
並べながら憶えてください。
きっと実戦の棋力向上へ役立つと思います。
注:
変同には
・玉方変化同手数駒余らず(詰め上がりで駒台に駒が余らない)
・玉方変化同手数駒余り(詰め上がりで駒台に駒が余る)
上記2種類のものがあります。
図:初形図
詰め手順① (作意手順)
43角成 22玉 32馬 同銀 34桂
31玉 43桂不成 同銀 41飛 32玉
42飛成 まで11手詰
この①の手順は 11手で詰み
なおかつ駒が余らずに綺麗に詰みます。
*作者の渡瀬荘次郎の作意の手順とします。
図: ①の詰上がり図
上図 駒が余らずに詰みました。
手順を観ながら詰めて
初形に戻して また詰めて
繰り返し 並べてみてください。
では次に 余詰手順を並べてみましょう。
盤面を 初形に戻してください。
詰め手順② (余詰)
43角成 22玉 32馬 同銀 34桂
31玉 23桂不成 同銀 41飛 32玉
42飛成 まで 11手詰
この②の手順は ①同様に11手詰みですが
途中 7手目で▲23桂不成と
攻め方が ①とは別の手ですが 詰みました。
攻め方が作意の手ではない手でも
詰みがあることを【余詰がある】とします。
ですから この詰将棋には余詰があります。
作品としては 不完全作ということになりますが
実戦の終盤力へは学ぶことも多いので
この手順もぜひ繰り返し並べてください。
たくさんの手・手順を知りましょう。
図: ②の詰上がり図
上図
▲23桂不成からも11手で詰みました。
駒台に 歩が一枚余ります。
最後に③の手順です。
盤面を 初形に戻してください。
詰め手順③ (変同:変化同手数駒余り)
43角成 22玉 32馬 同玉 12飛
同香 43銀成 22玉 34桂 11玉
23桂不成 まで11手詰
③も同じ11手で詰みます。
玉方が手を変える事を
変化といいますが
この③の手順では
玉方が 3手目の32馬を
△同玉と変化しても詰む変同
玉方変化 同手数 駒余り の詰となります。
前述の復習になりますが
変化して
同じ手数 駒が余らない場合は
変同でも
変化同手数駒余らずと呼びます。
変同は 今までの
詰将棋並べの連載の中でもしばしば出てきましたが
現代の詰将棋でも
最後の2手のみは許容されています。
今回の③の手順の場合は
・玉方の変化は 最後の2手ではなく
初手から数えて4手目です。
その後 7手で詰みです。
=総手数は11手ですね。
作意と同様の手数で詰みます。
(加えて駒台には1歩 余ります)
作品自体は不完全ですが
終盤の実力養成になります。
勉強のため この手順も憶えてしまいましょう。
図:③の詰上がり図
上図 ③の詰上がり図です
▲23桂不成までで詰みですね。
*=吊るし桂で詰み
参考記事:待宵第46番(吊るし桂の記述があります)
以上の詰め手順①~③までを
しっかり盤駒で並べて憶えましょう。
【詰将棋並べ】では
自力で解答を考えなくて構いません。
解答手順を観ながら
ゆっくり 確実に憶えてください。
憶えてしまったら 盤面を初形図に戻して
以下へ進んでください。
【学習・研究】
・初手の研究
初手についてまず観ていきます。
初形図から ▲82飛の王手はどうでしょうか?
飛車を横利きいっぱいに使っての
よくある手です。
*この飛車は
92・72・62からの王手でも
同じ意味です。
飛車は上記の地点の
どこから打っても構いません。
非限定打です。
図:初手 ▲82飛
この手は結論からいうと 詰みません。
以下で観ていきます。
図:初手▲82飛 △42歩
上図
△42歩の合駒が良いですね。
図:初手▲82飛 △42歩 ▲43角成
△22玉 ▲34桂 △12玉
12まで逃げました。
続けます。
図:6手目△12玉 ▲42飛成
飛車を成って王手しましたが
42の合駒が 歩のため
持ち駒には歩しかありません。
図:7手目▲42飛成 △同銀
上図まで進めてみると
攻め方は 駒台の 1歩では
玉を詰ます事ができません。
合駒が 金だったら
▲22金までで詰みですが
あいにく 歩では王手がかかりません。
従って
初手 ▲82飛は詰まない
合駒の42歩が好手でした。
よって
初手は ▲43角成となります。
*初手 ▲43銀成の王手もありますが
△22玉とされて 61の角が使えず詰みません。
盤面を 初形に戻してください。
図:初手 ▲43角成
初手 ▲43角成としました。
図:初手▲43角成 △22玉 ▲32馬!
3手目の▲32馬が素晴らしい手で
これは勉強していないと
指せない手でもありますか。
しっかり憶えておきましょう。
玉方の 玉と銀に働きかけた手ですね。
【玉方の対応】は
この後どう応じても 詰みになります。
観ていきます。
図:初手▲43角成 △22玉 ▲32馬
△12玉 ▲23桂成
上図
▲32馬に △12玉は
▲23桂成で詰みです。
馬を取らずに逃げると 早く詰みますから
32馬を取るしありません。
玉か銀か、ですね。
△32同銀から調べてみます。
盤面を 初形に戻してください。
図:初手▲43角成 △22玉
▲32馬 △同銀
上図は 3手目▲32馬に
△同銀とした図です。
図:5手目 ▲34桂
この▲34桂は良い手ですね。
桂馬が 縦に2枚並びました。
図:5手目▲34桂 △12玉 ▲22飛
上図
▲34桂に △12玉は
▲22飛で簡単に詰みです。
7手の早詰みです。
従って 34桂には
△31玉と逃げるのが 最善の頑張りとなります。
図:初手から▲43角成 △22玉
▲32馬 △同銀 ▲34桂 △31玉
上図 △31玉と逃げました。
ここから 飛車1枚では
詰まないように見えますか。
ですが 良い手があります。
図:6手目△31玉 ▲43桂不成 △同銀
▲41飛
7手目の▲43桂不成が絶好手で
△同銀の一手に
▲41飛と打てることになります。
銀の利きが 41になくなったため
上図の ▲41飛が実現しました。
この▲41飛には
△32玉と逃げるしかありませんが
作意の手 ▲42飛成までで詰みです。
*確認:最終手余詰 があります。
下の図です。
図:9手目▲41飛 △32玉 ▲43銀成
*余詰は 詰将棋のルール上
最終手のみには許容されています。
①の作意手順も 最終手が
▲42飛成でも ▲43銀成でも詰んでいます。
これを 最終手余詰と呼びます。
では 次に ②の
余詰手順について観ていきます。
6手目 △31玉までは
作意手順と同じ進行でした。
盤面を △31玉の局面まで戻してください。
=初形に戻して 6手目まで進めてください。
*局面を作成したり また戻したり
盤駒で実際に 駒を動かしてみてくださいね。
図:初手から ▲43角成 △22玉 ▲32馬
△同銀 ▲34桂 △31玉
上図
①の作意手順は 次の7手目で
▲43桂不成としましたが
ここで攻め方が▲23桂不成としても
詰みがあります=余詰です。
図:7手目 ▲23桂不成
上図をじっくり観てみましょう。
34の桂馬が良く利いていて
玉は 逃げ道がなく
△23同銀と取るしかありません。
図:7手目▲23桂不成 △同銀 ▲41飛
上図
▲41飛が実現しました。
しかも 22の地点には桂馬が利いていて
①の詰と同様 △32玉と逃げるしか
手がありません。
図:9手目▲41飛 △32玉 ▲42飛成
詰みです。
前述の通り 最終手は
▲42飛成ではなく △43銀成でも詰みですね。
=最後手余詰です。
盤駒でご確認をお願いします。
では最後に ③の 変同手順を観ていきます。
4手目で △同玉と
玉方が手を変えた順です。
盤面を 初形に戻してください。
図:初手から
▲43角成 △22玉 ▲32馬 △同玉
上図
玉方が 4手目で
△32同玉と 変化した図です。
▲32馬の好手には 当然
この△同玉も調べておきたいところです。
以下で観てみます。
図:4手目△32同玉 ▲12飛!
この ▲12飛は素晴らしい手です。
詰将棋や 実戦での終盤にここへ飛車を打って
逃げ道を狭くする ないし
詰みやすい形にする 頻出の手です。
憶えておきましょう。
▲12飛には △同香と応じます。
*5手目▲12飛には
△22銀と
盤上の駒を移動させる 移動合もありますが
その場合の手順は 以下です。
▲12飛 △22銀(移動合) ▲43銀成
△31玉 ▲23桂不成 △同銀
▲42成銀(ないし▲42飛成) で
持ち駒に 桂馬と歩が余る 11手詰になります。
盤駒でご確認下さい。
では 初手から
5手目▲12飛に △同香とする手順を
続けて観ましょう。
5手目▲12飛の局面に戻してください。
図:5手目▲12飛 △同香 ▲43銀成 △22玉
▲34桂 △11玉 ▲23桂不成
最終手 ▲23桂不成まで
吊るし桂で詰みの図です。
作意手順①と同じ11手
変化同手数 駒余りの ③の詰め手順でした。
▲12飛の効果です。
玉は △11玉と
逃げるしかありません。
途中でもし ▲12飛を指していないと
以下のようになってしまいます。
3手目 ▲32馬の局面まで戻してください。
図:3手目▲32馬 △同玉
▲43銀成 ▲12玉!
▲12飛を入れないで ▲43銀成としてしまうと
△12玉とされて
攻め方の持ち駒 飛車1枚では詰みません。
玉方の 31銀の利きが
22の地点にあるのですね。
失敗図:6手目△12玉 ▲22飛
△12玉に ▲22飛 と王手しましたが
△同銀で詰みません。
失敗です。
やはり▲12飛が良い手でしたね。
ここまでの 作意、余詰、変同手順の
①~③ までを 全部憶えてしまいましょう。
図:反転図
今回も
反転図からの詰みを練習します。
反転図での玉を自玉に見立てて
この図で 詰みがあることを確認します。
違和感のなくなるまで
順番に①~③までの手順を
観ながら 全て並べてみましょう。
①(作意手順)
43角成 22玉 32馬 同銀 34桂
31玉 43桂不成 同銀 41飛 32玉
42飛成 まで 11手詰
②(余詰)
43角成 22玉 32馬 同銀 34桂
31玉 23桂不成 同銀 41飛 32玉
42飛成 まで 11手詰
③(変同:変化同手数駒余り)
43角成 22玉 32馬 同玉 12飛
同香 43銀成 22玉 34桂 11玉
23桂不成 まで11手詰
①から③までの手順を憶えましたか?
できたら 今度は 手番を手前として
この玉にかかっている詰めろを
いつものように外しましょう。
自玉の詰めろを外す練習も 実戦では重要です。
盤面を 反転図初形に戻してください。
図: △22玉
△22玉としました。
玉の早逃げです。
この1手で詰みません。
*玉の早逃げは
良い手であることが多いですね。
もうひとつ 詰めろを外す手を挙げてみます。
反転図初形に戻してください。
図: △35銀
△35銀と
攻め方の桂馬を取りました。
桂馬を取り払うのも有効手段です。
攻め駒を取ってしまう・拠点の除去
これも基本ですね。
今日の勉強は終わりです。
手順は
憶えるまで 繰り返してみて下さい。
お強い方は頭の中で動かして、
全部の変化を憶えてください。
自玉の詰みの確認も ぜひお願いします。
そうして【詰めろ】を 外す手もいろいろあるので
やってみて 練習しましょう。
以下は例です。
例:
・△22玉 (玉の早逃げ)
・△35銀 (拠点の除去・攻め駒を取ってしまう)
上記の2つは 例です
憶えておいてくださいね。
まだまだ 逃れる手があります。
お強い方はたくさん
詰めろを 外す手を探してみて下さい。
また一緒に勉強しましょう。
*用語に関連する過去記事:
・変同・非限定→待宵第24番
・不完全作→待宵第34番
・最終手余詰→待宵第21番
局面作成
http://home.att.ne.jp/lemon/ogi/SituationFigure.html 様より
ありがとうございます。