今日の「詰将棋並べ」
勉強の準備は良いですか。
初めてのかたは 以下の過去記事で
学習の進め方をご確認ください。
【ぴよ将棋さん】を使用した学習方法も
併せて ご参照下さい。
ご自宅の盤駒で じっくりと
職場のご休憩の時間なら
マグネット盤などで
並べてくださると嬉しいです。
続いてコツコツと
江戸時代の作品から勉強していきます。
天野宗歩のお弟子さん「渡瀬荘次郎」
Wikipediaさんより
渡瀬荘次郎著 「待宵(まつよい)」から
「江戸慶応」の時代の詰将棋です。
今回は「待宵 第40番」 です。
【テーマ】
・居玉は避けよ
・玉の逃げ道を塞ぐ好手
・非限定打
・一間龍の形にする
・合駒を何にするか
・駒余りの詰将棋
・余詰
図:初形
詰め手順:
33馬 同桂 61飛 42玉 34桂
32玉 21銀 同玉 22金 同銀
41飛成 31金(合)32金 12玉 22桂成
同金 21銀 同金 同龍
まで 19手詰
上記の詰め手順を観ながら
憶えるまで 繰り返し並べてみてください。
この【詰将棋並べ】では
自力で詰ます事は必要ありません。
手順を観て 並べて 詰めたら
また初形に戻して また詰めて、を繰り返して
手順・手筋ごと 憶えてしまいましょう。
ここで学習しておいて
解く醍醐味は お手持ちの書籍にて
存分に お楽しみくださいね(^^)
図:詰上がり図
詰上がりで 駒台に金が余っています。
いわゆる【不完全作】ですが
江戸時代の作品集ということで
この 古典詰将棋からも
たくさんいいところを学んでいきましょう。
【学習・研究】
この詰将棋の 初形図での玉形は
指し将棋の 守りの陣形のひとつ
「舟囲い(ふながこい)」といいます。
*参考リンク:日本将棋連盟のコラムより
ですが 囲いの中に玉がいませんね。
平手の指し将棋の 初形の駒配置で
玉は 51 または 59の位置にいます。
指し進めるにつれて 味方の駒で
このような「囲い」を作り 自玉を守ります。
玉も 様々な囲いに応じて 定位置に移動するのですが
この待宵第40番の初形図のように
初期配置から動かない場合もあります。
このような玉を「居玉(いぎょく)」と言います。
せっかく 玉を守る陣形を作っても
その守りの中に入らないと 不安ではないでしょうか。。
「居玉は避けよ」という将棋の格言がありますが
【居玉】は 相手からの攻撃を受けやすいです。
この詰将棋は
居玉の弱さを
教えてくれる作品でもあると思います。
この形から 上の詰め手順で
いきなり 詰んでしまいます。
【初手の研究】
作者の意図する手順=作意手順では
初手は ▲33馬ですが
その他の初手で詰みがないことを
まず確認しておきます。
図:初手 ▲62金
上図 初手 ▲62金と攻めてみました。
この手はどうでしょうか。
図:初手 ▲62金 △42玉
初手▲62金を △同金としても詰みませんが
玉方としては
攻め方に金を渡すと
駒台にたくさん持ち駒があるので
なんとなく心配になりますね。
△42玉と 広い方
囲いの中へ逃げ込むのが良いと思います。
△42玉でも詰みません。
攻め方の 3手目▲52金には
△同金と取っておけば
その後の追撃がありません=詰みなしです。
*盤駒でご確認をお願いします。
盤面を 初形に戻してください。
図:初手▲62銀 △42玉
初手 ▲62銀にも
囲いに入ってしまう △42玉で
詰みません。
盤面を 初形に戻してください。
図:初手 ▲61飛
次に 初手 ▲61飛は
指してみたい手ですが
これにも △42玉で後が続きません。
詰みません。
初手の結論:初手33馬以外では詰まない。
盤面を 初形に戻してください。
図:初手 ▲33馬!
この初手▲33馬が
絶妙手です。
この手は知らないと指せません。
ぜひ憶えておきましょう。
実戦でこのような局面があって
詰ませられるなら 嬉しいですね。
作意手順では ▲33馬に △同桂でしたが
その他の応手だと 早く詰んでしまいます。
初手 ▲33馬に対して
・△42銀は ▲61飛で 1手詰
・△42金上は ▲61飛で 1手詰
・△42金寄は
▲61飛 △52玉 ▲62飛成 まで3手詰
*上記 金の符号
上(あがる) 寄(よる)の表記は
憶えていますか?
初めて見たという方や 自信のない方は
過去記事:符号のおはなし にて
復習もお願いします。
この局面では
「△42金 右・左」ではありません。
動きを優先するのですね。
正しい表記は 上・寄 です。
復習を兼ねての確認をお願いします。
続けます。
図:初手▲33馬 △同桂
▲61飛 △42玉 ▲34桂
3手目の▲61飛は
61でも 71からでも 81 91でも
どこから王手しても その後の詰め手順が同じです。
非限定打といいます。
この非限定打の意味合いは
当ブログでも 過去何度もご紹介していますので
憶えてくださっている方もおられるでしょうか。
さて
上図で 攻め方の 最後の
「▲34桂」
この手は良いですね。
*初手▲33馬に△同桂と取らせた意味となります。
図:5手目▲34桂 △32玉 ▲21銀
3手目▲34桂には △32玉と寄って
逃げるよりありませんが
さらに ▲21銀と 駒を捨てていきます。
図:7手目▲21銀 △同玉 ▲22金 △同銀
▲41龍!
11手目 ▲41龍と
ここまできてはっきりと
攻め方が【一間龍】を目指してきたことが
明らかになりました。
寄せの手筋ですね。
この「一間龍」をぜひ憶えましょう。
上図で 12手目△12玉と逃げると
その後
▲22桂成 △同玉 ▲32金 △12玉 ▲21龍
で 早く詰みます。
かといって
図:11手目▲41飛成 △31銀
12手目に
△31銀と 「移動合」をしても
*移動合:盤上の配置駒を移動させてする合駒。
図:13手目 ▲22金まで
▲22金として 易しい1手詰 です。
34の桂馬と41龍の連携が良く
上図で詰んでいます。
盤駒で確認をお願いします。
ということは
11手目▲41龍には
何か 31の地点に合駒が必要ですね。
合駒を選ぶポイントは
どの駒を合駒にすると
一番 玉方が頑張れるか?粘れるか?を考えることです。
苦手な方もおられると思います。
丁寧にみていきます。
【合駒の選択】
当ブログでは
合駒は「価値の安い物」から考えていき
とにかく「全部の合駒を調べましょう」という方法で
学習を進めています。
歩・香・桂・銀・金(作意の合駒)・角・飛
上記の種類全部を
ここからゆっくり 丁寧に
順番に並べて考えていきます。
まずは 一番価値の低い【 歩 】からみていきます。
盤面を 11手目▲41飛成の局面まで戻してください。
図:11手目▲41飛成 △31歩合 ▲32金
▲41飛成に △31歩合を調べます。
この歩合に攻め方は ▲32金とします。
図:13手目▲32金 △12玉
▲22桂成(ないし▲22金)
上記の手順で
13手目▲32金から
~▲22桂成(ないし▲22金)までで詰みです。
歩合では ▲32金から早く詰みますね。
次は 香合をみてみます。
局面を 11手目 ▲41 飛成まで 戻してください。
*わからなくなったら 初形図に戻して
作意手順の11手目まで並べてくださいね。
ゆっくりみていきましょう。
図:△31香合
香合です。
これも 先ほどの歩合と同じです。
上図以下
▲32金~▲22桂成(ないし▲22金)で詰みです。
わかっていても
丁寧に 順番に
一つずつ 合駒を調べていきましょう。
*これは慣れてきたら不要な作業ですが
最初はじっくり調べていくことで 考える力がついてきます。
次は桂合です。
局面を 11手目▲41飛成まで戻してください。
図:△31桂合
この桂合も同様ですね。
上図から
▲32金 △12玉 ▲22桂成(ないし22金)
で詰みです。
次は銀合です。
図:△31銀打
段々と 駒の価値が上がってきましたね。
銀合としました。
*この局面の銀合は 符号に注意が必要です。
盤上にはすでに 31の地点に移動できる銀がいます。
そこに 持ち駒の銀を打つので
この場合の符号表記は △31銀打 です。
(22にいる銀を移動させての合駒だと △31銀 です。)
さて この銀合には
攻め方はどうしましょうか。
みていきます。
図:12手目△31銀打 ▲32金
△12玉 ▲22桂成 △同銀 ▲21龍
銀合でも
上記の手順
△31銀打に ▲32金以下で詰みですね。
最終手の▲21龍では
持ち駒を使って ▲21銀としても詰みです。
次は金合ですが
この合駒が一番粘れる(=作意の合駒)ので
一番最後に調べることにして
先に 角合を調べてみます。
局面を 11手目 ▲41飛成まで戻してください。
図:△31角合
この角合も
△31角合 ▲32金 △12玉 *▲22桂成
同角 21龍までの早詰です。
途中 ▲22桂成の代わりに
【▲22金 △同角 ▲21銀】でも詰みです。
この手順も
盤駒で並べて憶えておきましょう。
次は飛車合です。
局面を 11手目▲41飛成まで戻してください。
図:△31飛合
飛車合も
▲32金 △12玉 ▲22桂成(ないし▲22金)で
早詰みです。
最後に 31金合を調べてみましょう。
初形図から 作意手順を並べてみます。
再掲:初形図
初手から
▲33馬 △同桂 ▲61飛(非限定打)△42玉 ▲34桂
△32玉 ▲21銀 △同玉 ▲22金 △同銀
▲41飛成
上記の手順から 12手目
図:△31金合(作意の合駒)
全ての合駒を調べての 作意の金合ですね。
この△31金合にも ▲32金とします。
図:12手目△31金合 ▲32金
△12玉 ▲22桂成
上図まで
15手目▲22桂成として
銀を入手しました。
攻め方の駒台に銀がありますね。
詰みまで観ましょう。
図:15手目▲22桂成 △同金
▲21銀! △同金 ▲同龍
手に入れた銀で
21から王手をして 以下詰みです。
この【金合】の手順が19手詰と
一番 玉方が
頑張った・粘った手です。
詰上がり図で 金が一枚駒台に余っているので
詰将棋の問題としては残念なのですが
実戦での終盤力の勉強として
途中の 素晴らしい手順を憶えてしまいましょう。
19手の詰将棋で 駒台に金が残って
さらに 15手目には
▲22桂成以外に ▲22金でも詰みますので
余詰もある作品となります。
*余詰があるとは:攻め方が手を変えても詰むことです。
【余詰を調べてみましょう。】
再掲:12手目 △31金合
上図から
△31金合に
▲32金 △12玉
「▲22金」からでも詰む。
図:△31金合 ▲32金 △12玉 ▲22金
作意手順では 15手目▲22桂成 以下
19手詰でしたが
上図のように
攻め方の15手目を【▲22金】と手を変えても
詰みます。
調べてみましょう。
図:15手目▲22金 △同金
▲22金には
玉方も △同金の1手です。
図:16手目△22同金 ▲同桂成
△22同金にも ▲同桂成と追撃して
その後の詰みまでを以下で観ましょう。
図:17手目▲22同桂成 △同玉
*▲21金 △12玉 ▲32龍
*ないし ▲32金 △12玉 ▲21龍
*または
▲31銀 △12玉(ないし△21玉)▲22金
上記 いろいろ手順がありますが
盤駒で 全てを
ゆっくりで良いので憶えましょう。
全部をしっかり憶えるのが
実力を付けるのに重要と思っています。
図:反転図
いつもの 反転図です。
今回も
大切な 反転図からの詰みを練習しましょう。
上図を作成できますか?
手前の玉を自玉に見立てて
この自玉の 詰みのあるなしを
勉強します。
*この詰将棋並べの連載では
初回からご紹介している練習です。
では 下記の詰め手順を観ながら
並べましょう。
詰め手順:
33馬 同桂 61飛 42玉 34桂
32玉 21銀 同玉 22金 同銀
41飛成 31金(合)32金 12玉 22桂成
同金 21銀 同金 同龍
まで 19手詰
図:反転図からの詰上がり図
詰みましたか?
これで
手前の自玉に 詰みがあることがわかりました。
違和感がなくなるまで
反転図からの詰みも 練習してください。
これは
実戦の終盤で
自玉に詰みのあるなしを確認する練習となります。
では 自玉に詰みがあることがわかりましたので
今度は手番を手前として
この 詰めろを外してみましょう。
*詰めろが外れないならば この玉は
必至の状態(=次にどう応じても詰む状態)
になっているということです。
盤面を 反転図初形に戻してください。
図: △42玉
1つ玉を上がって 舟囲いに入る手です。
【玉の早逃げ】ですね。
これで 手前の玉は詰みません。
もう一つ 詰めろを外す手を観てみます。
反転図初形に戻してください。
図: △61歩
攻め方からの ▲61飛を防ぐ
△61歩です。
これでも詰まなくなっています。
今日の勉強は終わりです。
【今回の作品のまとめ】
・19手詰
・余詰がある
・駒台に駒があまる
現代の詰将棋の書籍の問題のような
余詰もなく 駒も余らない「完全作」ではなく
【不完全作】の問題でした。
しかしながら
実戦練習には最適なので
今日ご紹介した全ての変化などを
盤駒で丁寧に並べて ご自身の力としてくださいね。
詰め手順は 憶えるまで繰り返してみて下さい。
お強い方は頭の中で動かして、全部の変化を憶えてください。
自玉の詰みの 確認も お願いします。
そうして「詰めろ」を 外す手もいろいろあるので
練習してみましょう。
例:
・△42玉 (玉の早逃げ)(囲いに入ってしまう)
・△61歩 (敵の打ちたいところへ打て)
上記は例です。 憶えておいてくださいね。
まだまだ 逃れる手があります。
お強い方はたくさん
詰めろを 外す手を探してみて下さい。
また一緒に勉強しましょう。
用語に関連する過去記事:
合駒について
・一間龍→待宵第22番
・不完全作→待宵第34番
・余詰→待宵第6番
・非限定打→待宵第49番
局面作成
http://home.att.ne.jp/lemon/ogi/SituationFigure.html 様より
ありがとうございます。